目次
香港とはどんな国?
中国の南東に位置する香港は、ひとつの独立した特別行政区です。
もともと中国の一部の町だった香港は、アヘン戦争のあと約150年間をイギリスの植民地として扱われていました。
1997年に中国に返還された香港ですが、イギリスの言葉や文化・政治・経済・価値観などは根付いたままです。
そのため、政治的・経済的に独立する一国二制度を採用しています。
香港の標準語は広東語です。
しかし、イギリスの植民地だったこともあり半数以上の人が英語も話せます。
香港の公用語は広東語と英語の2つです。
通貨も中国とは異なり、香港独自の香港ドルを利用しています。
香港には多種多様な国の人が住んでいます。
割合としては中国系の華人が多いですが、
- フィリピン人
- インドネシア人
- イギリス人
- 日本人
なども多く生活しています。
特に労働移住者の割合は、世界7位と世界的にみても移住者が多い「人種のるつぼ」であると言えます。
今や香港は、ニューヨーク・ロンドン・東京・シンガポール・上海に並ぶ世界都市であり、国際的な金融の中心地として発展しています。
そのため、高層ビルが建ち並ぶ大都会のイメージがあると思いますが、海や山・260以上の離島など豊かな自然も多く存在しています。
香港と日本のインターネット事情を比較
香港の人口約750万人中インターネットを利用しているのが約680万人と、91%の割合でインターネットは普及しています。
日本のインターネット普及率は92%なので、インターネット文化はほとんど日本と同じです。
インターネット利用者のうち、SNSを含むソーシャルメディアを利用している人は78%です。
日本のソーシャルメディア普及率は65%のため、ソーシャルメディアは日本よりも香港の方が利用率が高いことがわかります。
デバイス別の使用率を見てみると、スマートフォンの使用率は94%・パソコン使用率は71%・タブレットの使用率は52%です。
日本ではスマートフォン使用率が83%・パソコン使用率が76%・タブレットの使用率が38%のため、日本よりもパソコンよりスマートフォンを使う傾向にあります。
インターネットを使用している時間は、一日平均6時間16分と1/4をインターネットに使っています。
これは日本の4時間22分をはるかに超えており、香港の人たちが日本よりもインターネットを長時間利用していることが明らかになりました。
特にソーシャルメディアに関しては、使用している人のうち98%が他の人の投稿をチェックし、83%がコメントや投稿などのアクションを行っています。
香港のSNS事情
多くの人がインターネットを活用している香港では、SNSの普及率も高いことが分かっています。
香港で30%以上の人に利用されているSNSをランキング形式で紹介します。
順位 | SNS | 香港での普及率 |
---|---|---|
1位 | 82% | |
2位 | YouTube | 81% |
3位 | 79% | |
4位 | 60% | |
5位 | 54% | |
6位 | Facebook Messenger | 52% |
7位 | LINE | 30% |
8位 | 30% |
ちなみに、日本で30%以上が利用しているSNSは
- YouTube
- LINE
の5つです。
香港のSNS事情は、日本に比べると多分化されているということが分かります。
香港で人気のSNSは、日本では馴染みがないものもあります。
それぞれのSNSの特徴を解説します。
1位:Facebook
香港で82%の人に利用されているFacebookは、世界で約24億人のユーザーがいる世界最大のSNSです。
実名登録がマストなSNSなので、リアルな友人知人とのつながりが多い傾向にあります。
Facebookページという個人とは別のアカウントを作ることもできるため、ホームページとしての活用などビジネスシーンでも多く活用されるSNSです。
日本での利用者は年々減っている印象ですが、香港では一番人気で480万人の人が活用しています。
香港での広告リーチ率は72%にのぼり、FacebookでのSNSプロモーションが非常に有効であることがわかります。
香港でマーケティングを行う場合は、Facebookは必須のSNSだと言えるでしょう。
2位:YouTube
動画に特化したSNSであるYouTubeは、香港で81%の人に利用されています。
香港の人は主に、音楽ライブやアーティストの曲を見るためにYouTubeを使うことが多い傾向にあります。
日本でも普及している印象がありますが、利用率は71%程度。
日本よりも香港の方が割合で見るとYouTubeを利用していることがわかります。
YouTubeは世界で一番の動画サイトで、世界で20億人以上が利用しています。
YouTubeチャンネルを作るだけで、誰でも動画を投稿できるのがYouTubeの特徴です。
動画の視聴・投稿どちらも、基本的には無料で行えます。
投稿されている動画の内容はさまざまで、
- 音楽
- スポーツ
- ゲーム
- 映画
- ニュース
- 動物
など多岐に渡ります。
たくさんのジャンルが投稿されているため、YouTubeの利用年齢層は極めて広いです。
ターゲットが広い商品のPRや他のSNSにターゲットの年齢層が少ない商品は、YouTubeでのマーケティングがおすすめだと言えます。
3位:WhatsApp
日本ではあまり聞き馴染みのないSNSのひとつであるWhatsAppは、LINEと同じメッセージアプリの一種です。
メッセージアプリの普及率は国ごとによって異なり、WhatsAppは
- ブラジル・チリなどの南米
- イギリス・スペインなどのヨーロッパ
- ベトナム
- ニュージーランド
など幅広い国で愛用されています。
香港でのWhatsApp使用率は79%と高く、メッセージアプリでは一番使われています。
先述の通り香港は「人種のるつぼ」である側面があるので、たくさんの国で使われているWhatsAppの使用率が高いと言えます。
4位:Instagram
Instagramは、写真・動画の投稿がメインであるSNSです。
ライフスタイルやファッション、美容にグルメなどさまざまな投稿が行われ、いいね!やコメントなどでユーザー同士コミュニケーションを取ることも可能です。
日本では人気の高いInstagramは、香港では60%の人が使用しています。
その数は230万人にのぼり、女性の割合が57%と半数を超える結果となりました。
広告リーチ数は35%とFacebookよりは落ちますが、メインターゲットが女性の商品のPRや視覚に訴えるPRに向いているSNSのひとつです。
5位:WeChat
WeChatもWhatsAppと同じメッセージアプリのひとつです。
WhatsAppは全世界に普及しているのが特徴でしたが、WeChatは中国内でメインに使われています。
中国での普及率は82%と高く、中国の人口を考えるとかなり多くの人がWeChatを利用していることになります。
香港は中国からの華人が割合としては一番多いため、中国で流行しているWeChatは香港でも54%の人が活用しています。
これから中国人が増えれば増えるほど、WeChatの普及率はさらに上がります。
6位:Facebook Messenger
WhatsApp・WeChatと同じくメッセージアプリであるFacebook Messengerは、香港では52%の人に使われています。
Facebook MessengerはFacebookが運営しており、Facebook上の友達と連絡がとれるメッセージアプリです。
友達でない人にもメールリクエストを送れて、受理されればやり取りができます。
Facebook Messengerは、主にアメリカ・フランスで主流として利用されています。
香港ではFacebookが普及率No.1のSNSなため、Facebook Messengerもそれに比例して増えていっていると言えます。
7位:LINE
日本で大人気のメッセージアプリLINEは、香港で30%の人に利用されています。
LINEは日本だけでなくスペイン・モンゴルなどでも普及率が40%を超えており、他の国でも徐々に利用されはじめているSNSです。
今回紹介したWhatsApp・WeChat・Facebook Messenger・LINEのメッセージアプリは、消費者と密接したコミュニケーションを利用したマーケティングに向いています。
メッセージを送り特別感のあるPRができることに加え、メッセージアプリのデフォルトの設定である通知機能を活用することによって、エンゲージメント率が高いとも言われています。
8位:Twitter
140文字までのテキストを投稿できるTwitterも、LINEと同じく香港では30%の人に利用されているSNSです。
Twitterは匿名性が高く、短いテキストで発信できることが特徴的です。
発信の手軽さから即時性が強く、拡散力も高い傾向にあります。
Twitterはワードで検索できる機能があり、よく検索されるキーワードに引っ掛かった投稿がユーザーへの露出度につながるのです。
さらに、たくさんの人に拡散してもらえるような質の高い投稿をすることも、マーケティングが成功するポイントだと言えます。
香港のSNSマーケティング事情
実際に香港のSNSを使ってマーケティングを行うにあたって、特徴を知っておく必要があります。
香港でのSNSマーケティングには、以下のような特徴が備わっています。
知識を持つインフルエンサーが重宝される
香港ではただ単にフォロワー数が多いインフルエンサーではなく、専門性が高いインフルエンサーの方が活動している傾向にあります。
専門性が高いインフルエンサーは、専門家と同じくらいの知識を持っていることもあり、SNSで紹介するのは、自分の好きなものではなく自分が詳しいものがほとんどです。
例えば、食品を紹介する場合、美味しい・安い・調理が簡単などだけでなく、食材に含まれている栄養素や食品添加物、人体への影響といった専門性の高い紹介をするのが、知識を持つインフルエンサーの特徴です。
知識を持つインフルエンサーはジャンルが限られているため、フォロワー数には限りがあります。
しかし、専門のジャンルに興味を持つユーザーからの信頼性は非常に高く、購入機会を多く与えるほどの影響力があります。
香港のインフルエンサーを起用する際は、フォロワー数だけでなくどのような投稿を行っているかをしっかり見極めることが重要です。
間違ったジャンルのインフルエンサーを起用してしまうと、まったく効果のないマーケティングになってしまいます。
インフルエンサーのフォロワー数が重要
「フォロワーが多い方が影響力は大きい」と考える方が多いのではないでしょうか。
しかし、ここで伝えたいのは、フォロワー数が多すぎるインフルエンサーは避けるべきだということです。
インフルエンサーには大きく分けて4つの種類があります。
トップインフルエンサー | フォロワー数100万人超えのインフルエンサー |
マクロインフルエンサー | フォロワー数10万人超えのインフルエンサー |
マイクロインフルエンサー | フォロワー数1万人超えのインフルエンサー |
ナノインフルエンサー | フォロワー数1万人までのインフルエンサー |
フォロワー数が多くなるにつれて、リーチ力は大きくなります。
その一方、いいね!やコメント、実際の購入へのアクションは低くなっていしまいます。
香港では、フォロワー数が1万人から10万人の間のインフルエンサーの活躍が顕著です。
たくさんのユーザーにPRしてそのなかで興味がある人を探すよりも、そもそも限定されたジャンルのターゲットを狙って、反応の良いPRを狙っています。
香港でSNSマーケティングを成功させるためには、インフルエンサー選びは極めて重要です。
どのインフルエンサーを起用するか、事前にしっかりと調べないといけません。
香港以外のインフルエンサーも起用する
香港では、海外のインフルエンサーの活躍も目立ちます。
香港は何度も繰り返す通り「人種のるつぼ」である場所です。
そのため、様々な人種への対応力が高く、いくつもの言語を理解できる人の割合が高いと言われています。
公用語のひとつは英語のため、世界中の人たちとつながることも可能です。
香港の人口は約750万人で、世界ランキングでは100位と決して多いものではありません。
その中からジャンルに合うインフルエンサーを見つけるのは大変な作業になることも予想されます。
香港でSNSマーケティングを行う際は、世界中のインフルエンサーに目を向けてみても良いかもしれません。
香港のSNS活用事例
香港におけるSNSマーケティングでぜひとも起用したい人気インフルエンサーを紹介します。
100毛/Facebook
100毛とは、香港の人なら誰でも知っているメディア媒体です。
Facebookページのフォロワー数は150万人を超え、多くの人からの支持を集めています。
100毛は2013年、紙媒体のエンタメ雑誌から始まりました。
100〜500文字以内の文章の記事を100個近くピックアップし、ブラックジョークたっぷりで世間で話題のトピックを取り上げる100毛は、若者の間で話題です。
記事が短く簡単に読めること、内容が面白く拡散性があることから、100毛はFacebookとの相性がぴったりです。
Facebookページで雑誌の内容を投稿すると、たちまちさらなる人に人気のメディアになりました。
知識あるインフルエンサーの存在も、100毛が人気メディアになる大きな要因となっています。
Social More HKは、SNS上のトレンドやマーケティング情報、アーティスト情報などを発信するプロデザイナーが発信するアカウントです。
クリエイティブに関する役立ち情報が多く、実用的に参考できることからフォロワー数を増やしています。
わかりやすいビジュアルと内容から、デザインへの興味がある一般のユーザーからも支持を集め、11万人を超えるフォロワーがいるアカウントとして成功しています。
Social More HKが人気になった理由は、プロのデザイナーが作る洗練されたビジュアルがひとつだと言えます。
Instagramは視覚に大きく訴えるSNSであるため、おしゃれなグラフィックと一目でわかる投稿内容が多くのユーザーを魅了しています。
ポップで簡単に描かれているため、時事ネタや経済ニュースなども取っ付きやすいのもポイントだと言えます。
Mochi ♡ World’s Happiest Dog/Instagram(@orkyeh)
Instagramにおいてペットの投稿は人気のジャンルのひとつです。
香港でも、ペットインフルエンサーがInstagramの場を賑わせています。
紹介するのは、白いふわふわの気が特徴のポメラニアンのMochi。
さまざまな観光スポットに訪れては、「#orkyeh 」「#whitepomeranian」といったハッシュタグをつけて写真を投稿しています。
Mochiのアカウントはフォロワー数6.4万人で、マイクロインフルエンサーに該当します。
ペットは万国共通で人気の高いカテゴリーであることと、英語で簡単な文章だけが投稿されているので、香港だけでなく世界中からのフォロワーを集めているのです。
ペットの人気アカウントは、ペットフードやペット用品だけでなく、観光地やペットホテルなどさまざまな企業とコラボレーションができます。
実際Mochiのアカウントでは、電機メーカーのDysonの掃除機をPRしたタイアップ投稿も行われています。
ペットを飼う人なら悩みのひとつである抜け毛の問題を、Mochiの可愛いビジュアルとあわせてうまくPRしています。
Moanna S./Instagram(@moannaxdessire)
Moannaさんはファッションを中心に美容や料理、ライフスタイルなどの投稿を行うインフルエンサーです。
Instagramのフォロワーは5.5万人と多くの人からの注目を集めています。
Moannaさんの投稿の特徴は、なんといってもインスタ映えする写真の数々にあります。
レストランで、ホテルで、クルーザーの上で、アパレルショップの中で、などさまざまな場所を背景に、ゴージャスでハイセンスな写真の投稿が並びます。
Moannaさんは、実は日本企業のPR実績があり、きのこの会社である「雪国まいたけ」を使った料理を作る風景や料理の写真を魅力的に紹介しています。
この投稿には1,500件近くのいいね!がつき、普段レストランや料理写真を投稿しているMoannaさんだからこその結果だと言えます。
阿貝/YouTube
チャンネル登録者数11.2万人を誇るインフルエンサーの阿貝さんは親日家であり、YouTubeのチャンネル名も「貝遊日本」と日本に特化した動画を配信しています。
内容は、日本への旅行記や日本の旅行で役立つ情報、日本の商品やアニメの紹介など多岐に渡り、多いもので20万回以上視聴されている動画もあります。
阿貝さんのYouTubeの特徴は、統一感とわかりやすさです。
サムネイル画像に統一感を持たせ、凝ったオープニングや広東語の字幕付きのわかりやすい説明などさまざまなポイントで動画クオリティーを高めています。
香港には親日家の割合も高く、日本が多くの人から関心を集めていることがわかります。
阿貝さんは日本国内の観光PR動画を配信した経験もあり、インバウンド事業において注目すべきインフルエンサーの一人だと言えます。
海外マーケティングを成功させるには香港のSNSが使える
日本と同じぐらいSNSが普及している香港では、多くの言語が使える人々が多いことから世界的に人気のインフルエンサーが多くいることが特徴的です。
香港ではインフルエンサーを使ったマーケティングも進んでおり、フォロワー数だけでなく知識量や反応の良さを踏まえてインフルエンサーを選ぶことが重要なこともわかりました。
海外でのSNSマーケティングを始める際は、香港でのSNS活用事例を参考にしてください。